畳の香りとともに育った日々Growing up with the scent of tatami
僕が育ったのは、畳の匂いが当たり前に漂う家でした。夏にはひんやり、冬にはほんのり温かい畳の上でゴロゴロと過ごすのが、子ども時代の大切な記憶です。朝の光に照らされた畳の上に寝転んでいると、自然と心が落ち着いていったのを覚えています。
そんな何気ない日常のなかに、イグサの力があった——それに気づいたのは、大人になってからでした。
初めて知った、もったいない現実The first time I learned about the reality of waste
僕はイグサ農家に嫁ぎました。
実は実家もイグサ農家だったので、イグサ農家の仕事はある程度わかっていたつもりだったんですが、実際やってみると想像以上の手間と時間がかかっていることに驚きました。
田植え、除草、刈り取り、乾燥、選別——一本一本に心を込めて育てられているイグサたち。
でも、畳表になれないイグサや、端材として出る部分が想像以上に多く、行き場のないそれらが処分されている現実を見たとき、「もったいない…」という思いが自然にこみ上げてきました。
せっかく大切に育てたものが、何の役割も果たさずに終わってしまうなんて——。
そのときから、僕の中に一つの問いが生まれました。
「このイグサたちに、別の生き方を与えることはできないだろうか?」

小さなイグサに宿る、大きな力A small igusa has great power
イグサにはリラックス効果や空気の浄化作用、湿度調整など、僕たちの暮らしにとって嬉しい力がたくさんあります。
畳になれなかったイグサだって、その力は変わらない。香りも、質感も、ぜんぶそのまま。だったら——
「暮らしの中で使える新しいカタチにできたら、もっと多くの人にイグサの魅力が伝わるかもしれない」
そうして、端材を使ったアイテム作りが始まりました。
消臭パックなど小さくても確かな“癒し”を届けてくれる存在です。

イグサのある暮らしを、もっと身近にMaking life with Igusa more accessible
僕が作っているものは、ただの雑貨ではありません。誰かの心や体を、少しでも整えるための“道具”です。
イグサの香りに包まれながら、深呼吸してみる。ヨガや瞑想の時間にそっと寄り添う。そんな日常のひとときに、イグサがそばにあること。それこそが、今の時代にこそ必要なのではないかと思うのです。
そして何より、イグサ農家である家族が大切に育ててきたものを、僕なりのかたちで未来につないでいきたい——その想いが、僕の原動力です。

香りがつなぐ、心と未来Fragrance connects the heart and the future
イグサ農家に嫁いでから、僕の暮らしは少しずつ変わりました。自然の中で過ごす時間が増え、呼吸が深くなり、自分のペースを大切にできるようになった気がします。
この香りを、もっと多くの人に届けたい。畳を知らない世代にも、イグサの良さを感じてほしい。
そんな願いを胸に、今日も手を動かしています。小さなイグサの一片に、大きな可能性を込めて。

